優子との終焉

2004年2月14日
2人は待ち合わせの時間についていた。
互いに、その広い敷地のどこにいるのかわからないでいた。
でも、互いに電話しない。
まだ、別れることを互いに望んでいない。
その時間が少し遅れることを望んでいた。

彼は、その寺院の待合室にいた。
そこは風から身を守れ、お茶も自由に飲める場所であった。
そこでため息をついた。
「僕はこれから何ができるのだろうか」

彼女は、その寺院の本堂の中にいた。
そこは室内であり、椅子がたくさん用意されている。
その1つに座り、坊主たちが、大きな金の仏像の周りを掃除しているのをただ眺めていた。

彼が煙草を吹かしていると、携帯電話がなった。
彼女からの電話かと思ったが、仕事の電話だった。
それで彼は決心がついたのか、彼女に電話する。

「今、どこ?」
「もうついているよ」
「僕ももうついている」
「どこ?」
「待合室」
「私は中にいるよ」

彼が中に入り、たくさん並んだ椅子、そう500席はあるだろう中から、
端の方に女が座っているのを見つけた。
近寄ると、彼女だった。
彼は、彼女は綺麗だと思った。
彼女は、ちゃんと化粧をしていきていた。
いつもなら、そんなにしないのに。

彼は彼女の横の椅子に座った。
「寒いな」
「・・・・・」

彼は何を言ったらいいのかわからなかった。
本当は、
「別れたくない。本当は、好き同士なのに、別れる必要なんかないやろ」
と言いたかった。
けれど、それを相反する言葉もあった。
「僕には妻が実はいる。だから、もう無理なんだよ」

「ごめんね。私がわがままばっかりで」

彼女は語りだした。
彼は、おそらく既にメールで聞いていることしか言わないのだろうと思っていた。

「私は、○○の優しさに甘えていた」
「でも、やっぱりそれは○○を苦しめるだけと思う」
「だから、ごめんなさい」

彼は黙っている。彼女は続けた。やや涙声で。

「私はずるいくて、弱い。だからいて欲しかったし、今も好き」
「でも、忘れられなかった。そんなに器用じゃなかった。」
「いつも助けてくれて、優しくしてくれるから、甘えてしまった」
「ごめんなさい」

同じようなことを繰り返す。
彼には、その言葉は、うれしくもあったが、突き刺さるものもあった。
じわじわ殺されている。

「ごめんなさい。別れて下さい」

沈黙があった。その時も、坊主たちはお堂の中を掃除していた。
彼はようやく彼女の方を見た。そして、また前を向きなおし、口を開いた。

「掃除してるねんな」
彼は何も言うことができず、これしか言えない。

「春も夏も一緒にいれたらよかったな」
ようやくまとなことが言えた。

「夏は薄着だからぽちゃぽちゃがばれるから嫌われるから良かった」

「11月にここの前を歩いたな。雨ふってたな。」
「うん」
「僕らが会うときは、いつも雨やってんな」

「ごめんね。ごめんね。私がちゃんと忘れられたら・・・・」


「これで良かったやろ。苦しくなるやろ。」
「・・・・」
「そうやないと、僕が身を引く理由がないやろ」
「うん。やっぱり忘れられなかったから・・・」

はじけた。
なんかが%

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